ドゥーブ・ディンキンの補題

統計学では確率変数で条件付けられた条件付き確率 $P(A \mid X=x)$ がよく考えられる。 確率変数が生成するσ-代数によって条件付けられた 条件付き期待値や条件付き確率 $E[Y \mid \sigma(X)], P(A \mid \sigma(X))$ と 確率変数で条件付けられた条件付き確率や条件付き期待値の関係を理解するための基本的な定理がこの補題である。


定理 $X, Y$ を r.v. とする。次の2つは同値である。

  1. $Y$ は $\sigma(X)$-可測である
  2. $Y$ はあるボレル可測関数 $f:\mathbb{R} \to \mathbb{R}$ によって $Y = f(X)$ と表すことができる

特に $E[Y \mid \sigma(X)]$ は $\sigma(X)$-可測であるので、

\[E[Y \mid \sigma(X)] = f(X)\]

となるボレル可測関数 $f: \mathbb{R} \to \mathbb{R}$ が常に存在することがわかる。

証明

2 -> 1 は明らかなので、1 -> 2を示す。証明は、次の4つのステップで示される。

  1. $Y$ が指示関数の場合
  2. $Y$ が単関数の場合
  3. $Y$ が正値の場合
  4. 一般の場合

Step 1. $Y$ が指示関数の場合

$Y = \mathbf{1}_A$, $A \in \sigma(X)$ の場合。 このとき、$\sigma(X) = \{X^{-1}(B) \mid B \in \mathcal{B}\}$ ($\mathcal{B}$ は $\mathbb{R}$ のボレル集合族) であるため、$\exists B \in \mathcal{B}$ s.t. $A = X^{-1}(B)$。

すると、

\[\mathbf{1}_A = \mathbf{1}_{X^{-1}(B)} = \mathbf{1}_{B}(X)\]

であるため、$f = \mathbf{1}_B$ とすればよい。

Step 2. 2. $Y$ が単関数の場合

$Y = \sum_{n=1}^N \alpha_n \mathbf{1}_{A_n}$ の場合、Step 1. より $\exists B_1, \ldots, B_N$ s.t.

\[Y = \sum_{n=1}^N \alpha_n \mathbf{1}_{B_n}(X)\]

となるため、$f = \sum_{n=1}^N \alpha_n \mathbf{1}_{B_n}$ とすればよい。

Step 3. $Y$ が正値の場合

この場合は、単関数近似によって、$\exists (Y_n)_n$: 単関数の増大列 s.t. $Y_n \nearrow Y$ とできる。 Step 2.の結果によって、各 $n$ に対して $\exists f_n: \mathbb{R} \to \mathbb{R}$, ボレル可測関数 s.t. $Y_n = f_n(X)$、となる。

すると、$f: \mathbb{R} \to \mathbb{R}$ を $f := \limsup_{n \to \infty} f_n$で定義すると、$f$ は常に定義可能でボレル可測関数である。このとき$f(X) = \limsup_{n \to \infty} f_n(X)$である。

$\because$ $\forall \omega \in \Omega$ に対して $f_n(X(\omega)) = Y_n(\omega)$。両辺 $\limsup_{n \to \infty}$ を取ると、 左辺は $f(X(\omega))$ に、右辺は $\lim_{n \to \infty} Y_n(\omega) = Y(\omega)$ に収束するため $f(X) = Y$ が得られる。

Step 4. 一般の場合

この場合は $Y = Y^+ - Y^-$ と分解してそれの$Y^+, Y^-$に対してボレル可測関数で表現すればよい。

拡張

この補題は、条件付けるr.v.が複数個、また可算個の場合も成立する。

定理 $X_1, \ldots, X_N, Y$ を r.v. とする。次の2つは同値である。

  1. $Y$ は $\sigma(X_1, \ldots, X_N)$-可測である
  2. $Y$ はあるボレル可測関数 $f:\mathbb{R}^N \to \mathbb{R}$ によって $Y = f(X_1, \ldots, X_N)$ と表すことができる

可算個の場合は、$f:\mathbb{R}^\infty \to \mathbb{R}$ というボレル可測関数を考えることとなる。