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応用がしたい人のための「位相的データ解析から構造発見へ」の読み方

この記事では,パーシステントホモロジーを応用したい人が「位相的データ解析から構造発見へ - パーシステントホモロジーを中心に」を読むのにはどうすればよいか,ということを作者の一人として独断を持って説明します。数学の証明はとりあえずわからなくとも良い(知りたければ後から読めばよい),という方針で説明します。

まず第一にこの本は理論,方法論,応用事例,といった内容を中心としていて,実際にデータ解析する例などは載っていないので,それは別の方法で補う必要があります。大林が作ったHomCloudを使うならそこのチュートリアルをやるとよいでしょう。日本語の解説もあります。

というわけでこの本の読み方ですが,まずは1章に目を通して雰囲気を掴んだら応用事例が述べられた5章にいきなり行くとよいです。一部機械学習を使う話をしているのですが,それは4.1.3あたりにさっと目を通しましょう。4.1.2のパーシステンスランドスケープなどは5章をで使われていないのでとりあえず飛ばしてよいです。

それでパーシステントホモロジーが使えそうだ,となったら上で説明したHomCloudのチュートリアルをやってみるといいでしょう。それで自分のデータを解析してみてうまくいきそうだったら本を読むよりそっちをやったほうがよいかもしれません。

一方,これだと何をしているのかよくわからない,という人も多いでしょう。パーシステントホモロジーによる解析を解釈したい場合などはもっと勉強したくなると思われます。すると次に読むべきは2章です。まずは2.1節を読んでいきます。ホモロジーの基礎は線形代数なのですが,結構線形代数を奇妙な形で利用します。数学科で代数学を勉強した人であれば簡単ですが,そうでなければ難しいでしょう。まあ量子力学での線形代数の使いかたはこの比ではなく奇妙なので大学で物理を専攻した人なら頑張ってください。読むべきは2.1.1節で,ここに関しては演習も一通り全部やると良いです。2.1.2の立方体複体は画像への応用に興味のある人が読めばよく,飛ばしてもかまいません。2.1.3は目を通して雰囲気を感じる程度でいいです。2.1.3で重要な点は(1)単体的複体や立方体的複体以外でもホモロジーが定義できる(2)「ホモトピー同値」な図形同士は同じホモロジーの情報を持つ,の2点です。

2.2節はデータ解析の視点からは重要なことが色々書かれています。Vietoris-Rips複体とアルファ複体の構成とその性質は理解しておくと良いです。脈体の話は重要なのですが脈体定理の話は難しくこの本の中でも異質な部分なので「円盤の集まりの孔や空洞を調べたいときは対応する単体的複体を調べればよいことを保証する数学的理論」というくらいでふんわり理解しておけば良いでしょう。

次は2.3節ですが,これを読みきればパーシステントホモロジーは理解したと言ってよいでしょう。

その次は2.4をとりあず飛ばして2.5に目を通すとよいです。ここで説明されている安定性定理は実用上重要です。2.5では定理の説明はありますが証明は後回しです。

実際の所,このくらい読めば応用には不自由しないでしょう。4章は気になる所だけつまみぐいすれば良いです。

しかし,パーシステンス図計算アルゴリズムまで理解しないと責任が持てない,学術論文でパーシステントホモロジーを使うのならアルゴリズムまで理解したい,という人は2.4節にチャレンジしましょう。2.4はこの本の一番の山場です。

3章については読まなくていいです。この章は数学者向けに書かれていますので応用に主眼がある人は対象外です。

6章は短いまとめなので適当に読んでおいてください。読み方の説明は以上です。